② 2020年度 年次総会

テーマ

科学者-実践家モデルに基づく公認心理師の新しい時代を拓く
(2020年度年次総会・研修会 総合テーマ)


プログラム

PG1

全体企画シンポジウム
「現場で活躍できる公認心理師になるにはどうするか」

司会: 鈴木 伸一(早稲田大学/当会副理事長)

話題提供:島田 隆生(厚生労働省 公認心理師制度推進室)
     堀越 勝(国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター)
     丹野 義彦(東京大学/当会理事長)

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このプログラムの目的・ねらい

公認心理師は高い能力を持っており、こうした能力を十分に発揮して、現場で活躍できる公認心理師になるには、どのようにしたらよいだろうか。心理アセスメントや心理学的介入のスキルを深めることはもちろんのこと、国家資格としての公認心理師には法律・制度にもとづく多職種連携(チーム医療、チーム学校)、多職種間のコーディネート業務、サイエンスにもとづく心の健康教育など、幅広い仕事が期待されている。これから国家資格としての能力を高めていくために、どのようなことが必要か考えたい。

話題提供1:島田 隆生(厚生労働省 公認心理師制度推進室)

発表タイトル
行政は公認心理師にどのような活躍を期待するか

発表内容
 公認心理師制度については、平成29年9月に法律が施行されてから、これまでに2回の国家試験が行われ、3万人を超える公認心理師が誕生している。この度は、改めてこの制度の現状を振り返るとともに、公認心理師の活躍の場や期待されていること、養成や資質向上において求められていること等、厚生労働省における取り組みについて説明する。

話題提供2:堀越 勝(国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター)


発表タイトル
サイエンティスト&プラクティショナーモデルの今(米国における心理師訓練)

発表内容
 1949年、米国では「ボルダーカンファランス」でクリニカル・サイコロジストの理想像としてScientist & Practitioner Modelが示されたが、それは米国でどの様に実現されているのか。日本の養成課程とは異なり、米国では修士と博士レベルに分かれ、リサーチトラックとクリニカルトラックの2系統があり、それぞれに共通な訓練と異なる訓練、そして異なる学位と役割が用意されている。米国での心理師訓練の全体像とトラックごとの共通点、相違点などを紹介する。

話題提供3:丹野 義彦(東京大学/当会理事長)

発表タイトル
現場で活躍できる公認心理師をサポートする体制づくり

発表内容
 公認心理師には幅広い仕事が期待されており、知識と技術をつねに磨きスキルアップをはかる生涯学習の義務がある。公認心理師自身が努力することはもちろんだが、それをサポートする制度づくりも大切である。これについて、教育機関レベル(大学・大学院での養成)、職場レベル(職場での研修、スーパービジョン)、団体・学会レベル(研修会でのワークショップ、専門資格認定、職域拡大など)、国レベル(保険点数化、常勤化など)などに分けて考えてみたい。

PG2

医療部会シンポジウム
「医療現場で求められる多職種連携・チーム医療-公認心理師はどう他職種と働くのか-」

企画・司会:小林 清香(埼玉医科大学総合医療センター メンタルクリニック)
      佐藤 さやか(国立精神・神経医療研究センター)

話題提供:朝波 千尋(国立精神・神経医療研究センター病院)
     富安 哲也(亀田総合病院 臨床心理室)
     別所 晶子(埼玉医科大学総合医療センター 小児科)
     西 侑紀(福山リハビリテーション病院)

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このプログラムの目的・ねらい

 公認心理師には、多職種と連携した業務遂行、専門性の発揮が強く求められている。医療では、従来からチーム医療、つまり多様な専門職による連携・協働による、より良い医療の実践が推進されてきた。ここでは、医療のさまざまな領域において、先進的に活動を行っている方たちをお招きし、心理師としてどのようにチーム医療に参加し、貢献してきたか、その工夫を伺い、これからのチーム医療への展望を共有する機会としたい。

話題提供1:朝波 千尋(国立精神・神経医療研究センター病院)

発表タイトル
精神科治療チームにける心理職のコミットメント
発表内容
 精神科領域における心理職に期待される役割は多岐に渡っている。とりわけ傾聴や共感的態度の基本的カウンセリングスキルは疾患や問題に関係なく必要とされ、心理職が多職種の『つなぎ役』として機能するために最も重要なスキルともいえる。この点を踏まえ、専門領域である心理検査や心理的見立ての共有、多職種チーム内でどのように心理職が有機的に機能できるか、精神科臨床で取り入れている工夫を総括し、今後の展望を提起したい。

話題提供2:富安 哲也(亀田総合病院 臨床心理室)

発表タイトル
サイエンティスト&プラクティショナーモデルの今(米国における心理師訓練)

発表内容
 現在、医療機関においては多彩なチーム医療が展開されており、当院においてもいくつかの診療科チームに公認心理師がメンバーとして参加している。

 本発表では、公認心理を始め、いくつかのチームに属するメンバーが、既存のチームの枠を越えて多職種で関わったケースについて報告を行う。そのケースを振り返る中で今後のチーム医療や多職種協働について考え、公認心理師の動き方や実際上の配慮などについても私見を述べたい。

話題提供3:別所 晶子(埼玉医科大学総合医療センター 小児科)

発表タイトル
小児救命救急センターにおける重症患児の家族の対応について
―臨床心理士の役割を中心に―

発表内容
 子どもが亡くなることは、遺された家族の悲嘆が最も強いと言われているため、多職種による早期からの関わりが必須である。筆者が勤務する小児救命救急センターでは、重症患児が搬送されてくると、1~2日の内に心理士に依頼が入る。開室以来3年10か月間で心理士が介入した事例は72件である。

 今回の発表では、当センターにおける多職種による重症患児の看取りのプロセスを紹介する。また、当センターで実際に終末期を過ごし、亡くなった患児の事例を紹介する。早期からの心理士の介入が、重症患児の家族に関わる上で有用ではないかと考えられる。

話題提供4:西 侑紀(福山リハビリテーション病院)

発表タイトル
高次脳機能障害の臨床における公認心理師の他職種連携

発表内容
 高次脳機能障害は、外見では分かりにくいという特徴があることから、神経心理学的検査による評価が必要となる。当院では、OTやSTと共に公認心理師が、脳卒中や頭部外傷後の患者に対して神経心理学的検査を実施し、その結果と行動観察を元に報告書を作成している。

 そして、主治医や看護師、MSWなどの他職種にはカンファレンスで、ご本人やご家族にはICで高次脳機能障害の症状を共有し、今後の方針を話し合っている。

PG3

司法・犯罪・嗜癖部会シンポジウム
「矯正・保護・地域における心理的支援の連携のあり方:性犯罪者の更生に向けた公的支援と民間支援」

企画:有野 雄大(内閣府成果連動型事業推進室)
   寺田 孝(府中刑務所)
司会:嶋田 洋徳(早稲田大学)

話題提供:寺田 孝(府中刑務所)
     有野 雄大(内閣府成果連動型事業推進室)
     中川 桂子(大石クリニック)


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このプログラムの目的・ねらい

 公認心理師法第42条は、公認心理師に対して他職種との連携を義務付けている。しかし、司法・犯罪・嗜癖領域においては、公的支援における縦割り、公的支援と民間支援の間の情報共有の難しさ、更には地域における受け皿不足など、連携上の課題が少なくない。そこで、本シンポジウムにおいては、性犯罪者に対する心理的支援を例にとって、各機関の支援の実際を報告し、現行の枠組みの中で公認心理師として連携する方策について検討することを目的とする。

話題提供1:寺田 孝(府中刑務所)

発表タイトル
刑事施設の性犯罪再犯防止指導における他機関との連携について

発表内容
 性犯罪再犯防止指導を受講した者については、処遇の一貫性を保ち、実効性を高めるために、プログラム密度、回数、特記事項等を、刑事施設から保護観察所へ引き継いでいる。また、矯正と保護の現場職員の連絡協議会が毎年開催されており、互いに情報共有に努めている。保護観察所以外の機関とは直接的に連携することはないが、受講者の必要性に応じて地域のサポート機関を活用できるように関わることがある。

話題提供2:富安 哲也(亀田総合病院 臨床心理室)

発表タイトル
保護観察所の性犯罪者処遇における関係機関との連携について

発表内容
 保護観察所においては、性犯罪対象者に対して、認知行動療法の理論に基づく性犯罪者処遇プログラムを中心とする処遇を行っている。しかし、刑事施設で行われた性犯罪再犯防止指導の結果を保護観察処遇にいかすこと、プログラム、更には保護観察を終了した者に対するアフターケアについては課題もある。保護観察所における性犯罪者処遇の実情を概観し、刑事施設で行われた指導、地域の社会資源を活用する方策について考察する。

話題提供3:別所 晶子(埼玉医科大学総合医療センター 小児科)

話題提供3:中川 桂子(大石クリニック)

発表タイトル
性犯罪をした者への民間の心理的支援の多職種連携と多施設連携

発表内容
 性犯罪をした者の民間の心理的支援の1つとして、依存症外来を有する精神科クリニックの取り組みをあげることができる。精神科クリニックにおける心理的支援では、医師、看護師、精神保健福祉士、そして公認心理師がその役割を担い、さらに必要に応じて役所や就労移行支援施設との連携を行なっている。そこで、本発表ではこれらの取り組みにおける多職種連携と多施設連携について紹介する。

話題提供3:別所 晶子(埼玉医科大学総合医療センター 小児科)

話題提供4:西 侑紀(福山リハビリテーション病院)

発表タイトル
高次脳機能障害の臨床における公認心理師の他職種連携

発表内容
 高次脳機能障害は、外見では分かりにくいという特徴があることから、神経心理学的検査による評価が必要となる。当院では、OTやSTと共に公認心理師が、脳卒中や頭部外傷後の患者に対して神経心理学的検査を実施し、その結果と行動観察を元に報告書を作成している。

 そして、主治医や看護師、MSWなどの他職種にはカンファレンスで、ご本人やご家族にはICで高次脳機能障害の症状を共有し、今後の方針を話し合っている。

PG4

倫理・職責・関連法規部会講演
「科学者―実践家モデルは「絵に描いたモチ」ではない―「食える」心理職となるために」

司会:佐々木 淳(大阪大学)

講演者:武藤 崇(同志社大学)


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このプログラムの目的・ねらい

科学者-実践家モデルは、公認心理師の会の中核的な理念である。そこで、本発表は、科学者-実践家モデルを再確認し、今後の方向性を共有することを目的とする。その内容としては、①科学者―実践家モデルとは何か、②そのモデルと公認心理師の関係性、③科学者としてのミニマム・エッセンスとは何か、④実践者としてのミニマム・エッセンスとは何か、⑤その活動の具体例はどのようなものか、というものを予定している。

PG5

教育・特別支援部会シンポジウム
「行動コンサルテーションによる教育分野への支援

企画・司会:大石 幸二(立教大学)
      小関 俊祐(桜美林大学)

指定討論:大石 幸二(立教大学)

話題提供:大橋 智(東京未来大学)
     榎本 拓哉(明星大学)
     新井 雅(跡見学園女子大学)


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このプログラムの目的・ねらい

 コンサルテーションは、教育分野で活動する公認心理師に求められる主たる業務の1つである。その際に、客観的に観察可能で、共有することが比較的容易な「行動」に着目したコンサルテーションを展開することは、「科学者―実践家モデル」の求める、根拠に基づいた支援において極めて有用な手段である。本シンポジウムでは、行動コンサルテーションの理論と実践について整理を行い、行動コンサルテーションの重視する観点について共有することをねらいとする。

指定討論:大石 幸二(立教大学)

発表タイトル
教育分野において行動コンサルテーションを適用する際の留意点について考える

発表内容
 教育分野において行動コンサルテーションを適用する際の留意点のうち、①教職経験年数の豊富なベテラン教師(コンサルティ)への介入を成功させ、全校体制を整備することや、②幼児・児童生徒(クライアント)の行動問題のみならず学習深化や社会的相互作用促進の努力を継続することは成功を修め、知見が重ねられている。残るは、③コンサルタント自身の行動(相互作用スタイルや強化子の提示など)の分析を進め、養成・研修にその知見を活用することである。この点について話題提供者に問いかけてみたい。

話題提供1:大橋 智(東京未来大学)

発表タイトル
コンサルテーションの鳥瞰図:間接援助技法の概念整理

発表内容
 コンサルテーションは、Caplan(1963)よって援助技法として基本概念が形成されたが、その後広く間接援助技法として拡張され本邦ではさまざまなコンサルテーション(山本,1968・石隈,1999・加藤・大石,2004など)が用いられている。本発表では、行動論、精神分析学、社会組織論などの立場から位置づけられるコンサルテーションのだれを「対象」とするか、なにを「効果」とするかについて全体像を示したい。

話題提供2:榎本 拓哉(明星大学)

発表タイトル
校内での包括的な行動支援計画の導入と維持―公立高等学校におけるコンサルテーションの実践から―

発表内容
 発達の問題を持つ児童生徒の増加などにより、義務教育以降の支援活動が急務となっている。それを受け、文部科学省は都道府県の普通科高校に「通級指導教室」を設置するモデル事業を展開している。しかし、継続的な行動支援計画を実行する体制が十分に整っているとは言い難い状況である。そこで、校内の特別支援委員会と公認心理師が中心となって学内での支援体制を整備し包括的な支援を行ったケースを紹介し、今後の高校での間接支援の展開と公認心理師の関わりとして重要な要素を考察する。

話題提供3:新井 雅(跡見学園女子大学)

発表タイトル
「チーム学校に活かす行動コンサルテーション」

発表内容
 複雑化・多様化した問題を抱える近年の学校現場において、スクールカウンセラー等の心理専門職(公認心理師)には、教師や保護者など様々な関係者と積極的に連携・協働しつつ、問題の予防や未然防止をも含めた心理教育的な援助活動に貢献することが強く求められている。
 本シンポジウムでは行動コンサルテーションの観点から、チーム学校に基づく心理教育的な援助活動の展開を支える心理専門職の役割と可能性について検討する。

PG6

福祉・障害部会シンポジウム
「心理学とノーマライゼーションの関係におけるパラダイム・シフトは可能か:分担から連携、そして共創へ」

企画・司会:武藤 崇(同志社大学)

話題提供: 熊 仁美(特定非営利活動法人ADDS)
      陶 貴行(LITALICO研究所)
      河野 禎之(筑波大学)

指定討論:境 泉洋(宮崎大学)


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このプログラムの目的・ねらい

 従来、「科学は人間性を疎外する」というステレオタイプによって、「(科学的な)心理学」と「ノーマライゼーション(インクルージョン)」との関係はトレード・オフ(trade-off)なものとみなされることが多かった。そこで、本シンポジウムの目的は、児童福祉、障がい者福祉、高齢者福祉の現場で活躍する「科学者−実践家」にご登壇いただき、心理学とノーマリゼーションとの良好な「橋渡し」の実例を明示することとする。

話題提供1:熊 仁美(特定非営利活動法人ADDS)

発表タイトル
科学者-実践者モデルに基づいた発達障害の早期支援エコシステムの全国実装

発表内容
 発達障害のある児童への大規模な支援研究は、欧米を中心に蓄積されてきた。本発表では、それらの成果を基盤とした早期支援モデルを15拠点へ導入した全国実装プロジェクトの成果報告を行う。具体的に、(1)我が国の実態に即した親子共学型療育モデルの効果、(2)ICTを活用した科学者-実践者モデルに基づく実装戦略、(3)社会的インパクト評価(350家庭の親子の変化や実装科学的な条件検討)について述べ、政策への活用や福祉領域における科学技術の有用性についてふれる。

話題提供2:陶 貴行(LITALICO研究所)

発表タイトル
ノーマライゼーションの実現に向けた障害のある方々への科学的心理学に基づく就労支援

発表内容
 わが国の障害のある方々の雇用は、障害者雇用促進法に基づき、雇用施策や職業リハビリテーションの措置が取られており、その背景にはノーマライゼーションの理念がある。しかし、就労から職場定着の過程には誤解や無理解により不適応に至る事例もある。本発表では、科学的心理学に基づく就労支援の実践により、➀いかにして個と環境の相互作用として生じた障害にアプローチできるか、➁個人や環境にどのような影響を与えうるか検討する。

話題提供3:河野 禎之(筑波大学)

発表タイトル
認知症とノーマリゼーション/インクルージョン―認知症フレンドリー社会へのパラダイムシフト―

発表内容
 認知症の人々を取り巻く環境は、この10年間で劇的に変化しつつある。それは、これまで医療や介護、福祉の領域で語られてきたものが、現在では広く社会全体として考えるべき課題として認識され、「認知症フレンドリー社会」の実現に向けた取組が世界的に加速していることにある。その中で、心理学、特に心理臨床家は、多様な専門職や人々とともに、とりわけ当事者である認知症の人本人とともに協働することで、新たな貢献が求められている。

PG7

産業・労働・地域保健部会シンポジウム
「職場復帰支援―治療と仕事の両立に必要な支援とは-」

司会:水島 秀聡(小島プレス工業(株)

話題提供: 田上 明日香(SOMPOヘルスサポート(株))
      浅野 健一郎((株)フジクラ)
      立石 清一郎(産業医科大学病院)


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このプログラムの目的・ねらい

 産業領域における心理職の職場復帰支援は、うつ病をはじめとするメンタル疾患を持つ就労者支援を中心に行われてきたが、少子高齢化に伴う労働人口の減少などを背景に、様々な疾患の治療と仕事の両立をしている就労者の支援など、求められる対応範囲が広がっている。本シンポジウムでは、心理職・企業・産業保健/医療の立場から、産業領域で、“今”、公認心理師に求められることについて話題提供いただき理解を深めていきたい。

話題提供1:田上 明日香(SOMPOヘルスサポート(株))

発表タイトル
職場復帰支援の広がり―公認心理師の立場から―

発表内容
 産業・労働領域を主たる専門領域とする心理職は約4%と少ないが、職場復帰支援として医療機関などで働く人の支援に関わっている心理職は少なくない。本発表では、職場復帰支援の広がりに着目して、産業領域における治療と仕事の両立支援の文脈で個人と組織に対して生じているニーズの広がりと、そのニーズに対応するうえでの現状と課題について、産業領域で働く先生方に加えて連携先の他領域の先生方にも話題提供させていただきたい。

話題提供2:浅野 健一郎((株)フジクラ)

発表タイトル
企業の立場からみた「治療と仕事の両立支援」の意義

発表内容
 今、働き方改革の一環として、治療と仕事の両立支援が取り上げられ、あたかも新しい働き方の如く捉えられがちであるが、現実はこれまでの就労環境や実態の中で、普通に行われてきた行為である。では、これまでの両立支援とこれからの両立支援では、何が異なるのであろうか。企業経営の視点からの両立支援の意義、労務管理の視点からみた両立支援の違いについて概観することにより、今求められる両立支援のあり方を考察する。

話題提供3:立石 清一郎(産業医科大学病院)

発表タイトル
認知症とノーマリゼーション/インクルージョン―認知症フレンドリー社会へのパラダイムシフト―

発表内容
 治療と仕事を両立したい労働者は様々な悩みを抱えている。両立支援のガイドラインでは事業場において就業上の配慮を行うことについて多く記載されているが、心理的なサポートについてはあまり触れられていない。治療するにあたって、膨大な情報量と、多くの意思決定の必要性があり、ひとりで解決しきれずに不合理な判断に至る。当事者に寄り添い、情報整理のうえで、正しい意思決定に導くことを心理職には期待したい。