公認心理師の会 設立記念講演会
【速報】一般社団法人公認心理師の会の設立記念講演会は大盛況のうちに終わりました

日時

2019年5月26日(日)13:00~16:00

場所

東京大学駒場キャンパス 21KOMCEE EAST 地下011室

終了報告

厚生労働省(令和元年5月15日付)
文部科学省(令和元年5月21日付)
公益社団法人 日本心理学会
公認心理師養成大学教員連絡協議会
日本心身医学会

プログラム

第1部 記念式典

来賓祝辞
河村建夫 衆議院議員 心理職の国家資格化を推進する議員連盟会長 元文部科学大臣
石田昌宏 参議院議員 参議院厚生労働委員長
(メッセージ代読:政策秘書 五反分正彦氏)
齋藤慶子 全国保健・医療・福祉心理職能協会 顧問

第2部 理事長講演
基調講演 科学者―実践家としての公認心理師: 新しい「令和」の時代の心理職
丹野義彦(一般社団法人公認心理師の会 理事長 東京大学教授)

第3部 キックオフ講演会「これからの公認心理師の活動と研修システム」

医療分野:鈴木伸一(一般社団法人公認心理師の会 副理事長 早稲田大学)
教育分野:小関俊祐(桜美林大学)
福祉・障害分野:武藤崇(同志社大学)
産業分野:田上明日香(SOMPOヘルスサポート)
司法・犯罪分野:嶋田洋徳(早稲田大学)
実習指導者のための研修:養成大学と現場をつなぐもの 五十嵐友里(東京家政大学)

参加者

約300名

チラシ

参加いただいた方々およびご協力をいただいた方々に深く感謝申し上げます。
講演会の様子や講演内容については以下のアフターレポートをご覧ください。

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設立記念講演会を盛大に開催しました

 公認心理師の会が一般社団法人となったのを記念して、設立記念講演会が2019年5月26日に東京大学駒場キャンパスで開かれました。参加者は300名で、立ち見が出て会場に入りきれないほどの大盛況でした。

 ご来場いただいた方々およびご協力をいただいた方々に深く感謝申し上げます。

厚生労働省と文部科学省から「後援」を受けました

 設立講演会に対して、以下の多くの団体から後援をいただきました。たいへん感謝いたします。

厚生労働省(令和元年5月15日付)
文部科学省(令和元年5月21日付)

日本心身医学会 公益社団法人 日本心理学会
公認心理師養成大学教員連絡協議会(公大協) 東京大学教養学部70周年記念

第1部 設立記念式典

河村建夫衆議院議員と石田昌宏参議院議員から設立の祝辞をいただきました

河村建夫 衆議院議員(心理職の国家資格化を推進する議員連盟会長,元文部科学大臣)からご祝辞をいただきました。

石田昌宏 参議院議員(参議院厚生労働委員長)から激励のメッセージをいただきました。(政策秘書 五反分正彦氏が代読)

齋藤慶子 全国保健・医療・福祉心理職能協会顧問からご祝辞をいただきました。

厚生労働省 公認心理師制度推進室からもご参加いただきました

  • 厚生労働省 公認心理師制度推進室からおふたりにご参加いただきました。
  • 法務省、防衛省、海上保安庁からのご参加をいただきました。

参加者は300名で、立ち見が出て会場に入りきれないほどの大盛況でした


第2部 理事長講演

基調講演 科学者―実践家としての公認心理師:新しい令和の時代の心理職

一般社団法人公認心理師の会 理事長 東京大学 教授
丹野 義彦

 ご来場いただいた皆さま、後援をいただいた厚生労働省、文部科学省及び諸団体に深く感謝申し上げます。

ご来場いただいた皆さま、後援をいただいた厚生労働省、文部科学省及び諸団体に深く感謝申し上げます。

1.なぜ「公認心理師の会」をたちあげたか
 公認心理師の会は2018年11月に設立され、2019年4月に一般社団法人となりました。設立の経緯は、2018年3月の公認心理師養成大学教員連絡協議会(公大協)の設立にさかのぼります。公大協の目的は、「科学者-実践家モデル」の理念にもとづき、大学・大学院で公認心理師を養成することです。公大協の活動を続けるうちに、科学者-実践家モデルを真に実現するには養成校と現場の公認心理師の連携が不可欠であることを痛感するに至り、有志が集まり、公認心理師の会を設立しました。公大協と公認心理師の会はきょうだい関係にあり、車の両輪として機能します。

2.ようこそ公認心理師の会へ
 公認心理師の会の目的は、国民のメンタルヘルスの向上のため、科学者-実践家モデルに基づいて公認心理師のスキルアップとキャリアアップをめざすことにあります。「科学者-実践家モデル」とは、科学者としての客観的知識や冷静な探究心と、実践家としての技能や人間性の両方を兼ね備えた高度専門職業人をめざす理念です。もともとはアメリカの大学院における実践心理学の教育理念として唱えられたものですが、今では世界標準の考え方になっています。

公認心理師の会への入会資格は公認心理師資格を持つことです。会員にはいろいろな特典があります。ぜひご入会ください。

3.世界の動向からみた公認心理師
 ストレスや精神疾患は国民の幸福度を下げる最大の要因であり、メンタルヘルス(こころの健康)の維持増進は社会問題となっています。こうした社会的要請に応えて、心理療法も大きく進歩しました。世界の専門家の間では、今世紀に入ってパラダイムシフトがおこり、価値観や方法論が劇的に変化しています。その代表は、イギリス政府が2008年におこなった「心理療法アクセス改善」政策です。こうした世界的な変動を受けて、メンタルヘルスの専門家である公認心理師が国家資格となりました。

4.公認心理師のスキルアップをめざして
 わが国でもさまざまなメンタルヘルスの問題がおこっており、公認心理師の主要5分野(医療・教育・福祉・司法・産業)にそれが反映されています。国家資格者としての公認心理師に期待される業務は、法律・制度にもとづく多職種連携、サイエンスにもとづく心の健康教育など、これまでより幅広いものがあり、それは公認心理師のカリキュラムや国家試験にも反映されています。公認心理師は、知識と技術をつねに磨きスキルアップをはかる生涯学習の義務があります。公認心理師の会は、主要5分野専門研修会などによって公認心理師のスキルアップを支援します。

5.公認心理師のキャリアアップをめざして
 公認心理師の会は、公認心理師のキャリアアップ(就職機会向上)をめざして、専門資格制度などによって支援します。公認心理師制度の今後には、公認心理師の業務の保険点数化、業務内容や職域拡大などさまざまな長期的課題があります。そうした課題は、公認心理師が社会の中でステップアップしていくビッグチャンスでもあります。公認心理師の会は、そのような課題にひとつひとつ着実に取り組んでいきます。

みなさまのご支援のもと、公認心理師の会は、国民のメンタルヘルス向上と公認心理師制度の発展に向けて全力で取り組んでいく覚悟です。今月、時代は令和と変わりました。新しい公認心理師の時代がやってきました。ぜひ一層のご支援をいただけますようにお願い申し上げます。

第3部 キックオフ講演会

キックオフ講演会 これからの公認心理師の活動と研修システム

 公認心理師の会が最も力を入れる活動は「主要5分野専門研修会」です。主要5分野(医療・教育・福祉・産業・司法)と実習指導について、「参加してよかった」と思える研修会を企画していきます。

 このキックオフ講演会では、分野ごとに、(1)その分野の公認心理師の課題とその展望、(2)公認心理師の会の研修の計画について紹介しました。

医療分野における公認心理師の活動と研修

公認心理師の会副理事長 医療部会 早稲田大学 教授
鈴木 伸一

 医療は、医師、看護師をはじめ多くの国家資格専門職がチームを構成して展開されている。心理職はこれまでも心理の専門職としてチーム医療に貢献してきたが、心理職も公認心理師という国家資格となった今、国家資格専門職の一員として、いままでの価値観や業務スタイルを脱却したパラダイムシフトを求められているといえるだろう。

 まず、従来型の個室臨床から脱却し、多職種連携のスキームに基づいた目標設定と業務スタイルを構築していく必要があるだろう。また、心理師業務の成果としての臨床アウトカムを常に意識し、どのような患者のどのような問題に、どのような貢献ができるかをデータに基づいて示していくことが求められる。さらに、チーム医療おける公認心理師の専門性と役割を周囲にアピールしてけるようなプライドとアイデンティティーを持っていくことが大切であると思われる。

 医療における国民のメンタルケアへのニーズは、精神医療をこえた身体医療での充実、すなわち、「どんな病気になっても、身体だけでなく、“こころ”も支援してもらえる医療の実現」へと変遷してきている。この国民の期待に応えるためには、公認心理師が、医療におけるさまざまな領域において、患者のさまざまな苦悩の緩和にしっかり貢献できることを実力で示していくことが重要であろう。また、それらの心理業務に対する診療報酬を拡充していくことも喫緊の課題である。

 このような医療における公認心理業務の未来を医療界や行政にただゆだねるのではなく、公認心理師自身が、「自らの道を拓いていく」という強い志なくは実現できないということを、肝に銘じる必要がある。

 公認心理師の会の会員が総力を挙げて、これらの重大なミッションを成し遂げていくことができるよう、この会を育てていきたいと思う。

教育分野における公認心理師の活動と研修

公認心理師の会運営委員 教育・特別支援部会長 桜美林大学 講師
小関 俊祐

 教育分野において活動する公認心理師にとっての大きな課題の1つに、教育分野における心理的支援の提供に対するエビデンスが十分に確立されていないという点が挙げられる。実際には、個別のケースとして、不登校の解消やいじめの問題への対応、そのほかの問題行動の減少や適応行動の増加など、スクールカウンセラーをはじめとした教育分野において活動する心理職の果たしてきた役割は非常に大きい。しかしながら、たとえば不登校においては、「学校復帰だけがゴールではない」と言われるようなことに象徴されるように、支援方略やそのアウトカムの蓄積が困難であるために、不登校の発生件数やいじめの認知件数に対して目に見えた成果に至っていないのが現状であると考えられる。

 このような課題と現状を踏まえた上で、公認心理師に求められている「国民の心の健康の保持増進」に対して具体的な方略として寄与するためには、いじめや不登校、あるいは学童期から生じる不安や抑うつなどといった心理的問題の早期発見や、早期対応、および予防的支援を充実させていくことが重要であるといえる。そのためには、教育分野の公認心理師が、学校適応促進の方略を提案、提供できる知識や技能を高い質で習得し、いじめや不登校の問題が生じた際には、その緊急度をアセスメントした上で、緊急度に応じて、根拠を示しつつ対応策を提案できることが必要となるであろう。

 これらの課題に対して、公認心理師の会と公認心理師養成大学教員連絡協議会(公大協)が連動して、教育分野における公認心理師に求められる知識と技能を整理し、大学院および資格取得後の研修を展開していくことが重要となると考えられる。

福祉・障害分野における公認心理師の活動と研修

公認心理師の会 理事 福祉・障害部会長 同志社大学 教授
武藤 崇

 日本は、世界の中で最も少子高齢化が進んでいる国である。長生きをする人が増えるということは、その分「不可逆な身体的障害(脳を含む)」を抱えながら生活する人が増えることになる。さらに、65歳以下の「支える世代」の割合が減ることになり、心理専門業務も、従来のようなマンツーマンの援助・支援スタイルを維持することが物理的に難しくなることが予想される。そして、障害を抱える高齢者に対するケアシステム自体も、病院ではなく、地域社会・家族を基盤にし、多職種連携だけでなく、非専門職の人的資源の活用も前提としたものになりつつある。そのような文脈では、心理専門職も、地域へアウトリーチし、多職種連携し、さらに家族などのインフォーマルな支援者に対してコンサルティングをするという「開かれたコミュニケーション能力」ことが求められる。そして、その支援結果に関する情報伝達を効率的に行うためには、データ化、分析能力といった科学的能力が欠かせない。

 以上のようなことから、福祉・障害分野で働く公認心理師は特に、科学者・実践家モデルに依拠する必要がある。当日の発表では、認知症に関連する問題を題材に、上記の内容を説明した。

産業分野における公認心理師の活動と研修

公認心理師の会 運営委員 産業・労働・地域保健部会長 SOMPOヘルスサポート(株)
田上 明日香

 産業分野を主たる領域とする心理職は少ないが、「個人」の職業生活の中で生じる課題に対する支援という視点で考えると、他領域との接点の多い領域であるともいえる。では、産業領域ならではという視点で考えると、「個人」と個人をとりまく「組織」の両面から健康度を高めていくアプローチを重視していくことに特徴がある。

 産業領域の健康づくりは、労働安全衛生法により事業者が行うべき義務が定められており、公認心理師の国家資格化により、労働安全衛生法に定められているストレスチェックの実施者に“公認心理師”が明文化されるなど、従来のストレス対策や職場復帰支援とその後の再発予防、加えて職場適応支援などのメンタルヘルスに関連する支援は既に重要な活動領域である。今後の展望として、経営資源である従業員に健康的な生活習慣を若年層から身に着けてもらうための行動変容に向けたアプローチと、その効果測定に基づく次年度の計画立案の支援などの領域、また連携の視点として、他職種チームでの産業保健体制の推進や治療と仕事の両立などの様々な事情を抱える従業員の両立を支援するための、社内外の専門家との連携の領域などで、コミュニケーションの専門家でもある心理職の活躍の場は期待できる。

 しかしながら、即戦力を求められがちな産業領域において、実務経験のない心理職が最初の経験を積む場が少ないため、産業領域で働く心理職が増えないという課題がある。今後は、「個人」支援にも役に立つ産業領域の知識の発信と、個人をとりまく「組織」にアプローチしていくために、経験を重ねることができる環境づくりも重要になると考えられる。


司法・犯罪・嗜癖分野における公認心理師の活動と方向性

公認心理師の会 理事 司法・犯罪・嗜癖部会長 早稲田大学 教授
嶋田 洋徳

 司法・犯罪分野の公認心理師の活動は、大きく公的施設における活動(矯正、保護、司法、警察等)と、触法者に対する民間施設における活動(クリニック、各種相談機関等)に大別することができる。そして、近接分野には、必ずしも触法には分類されない場合があるものの、嗜癖の問題を有する者に対する活動がある。そこで、公認心理師の会では、これらの活動を包含し、司法・犯罪・嗜癖分野として活動を始めることを試みている。

 近年のこの分野は、いわゆる官民の連携が多く試みられ始めているが、お互いにどのような活動を行っているのかという点に関しては、十分に情報が交換されているとは言えない状況にある。たとえば、十年強前に法制度が整えられ、矯正や保護で行われている特別改善指導プログラムや専門的処遇プログラムも、その内容等があまり公開されていないこともあり、民間施設や他の公的施設でも十分に知られているとは言いがたい。支援対象者の再犯や問題行動の再発を包括的に防止するためには、特定の施設の力だけではなく、官民の双方が機能的に連携する必要があるが、公認心理師という共通の枠組みを活用することによって、技法、理論、理念等の共有をすることが可能になることが期待される。

 司法・犯罪・嗜癖分野は、言うまでもなく法令等の改正の影響を色濃く受けるが、それらの社会的ニーズに応えるためには、まだ活動の効果のエビデンスが十分に蓄積されていない部分もあることから、公認心理師の他の分野を含めた研究協力やそれらの成果を含めた研修体制が必要であると考えられる。


実習指導者のための研修:養成大学と現場をつなぐもの

公認心理師の会 運営委員 医療部会長 東京家政大学 講師
五十嵐 友里

 公認心理師養成においては、現場における実習が大変重要視されている。養成大学と実習を受け入れる現場は、国民の心の健康の寄与できる心理師の素地を経験学習を通して育むことを共通の目的として持っていると言える。この目的のために、養成大学と現場は協働して公認心理師養成に取り組んでいく必要がある。

 これまでの心理系大学院における医療現場での実習の多くは、各大学教員と現場の心理職や医師の個別のつながりで行われていることが多く、実習に関する目標、実習内容や形態、評価などにおいて統一されたものが存在しなかった。しかしながら、今後は、公認心理師のクオリティコントロールの観点からも、実習の目標、評価基準やその方法を明確化して取り組んでいく必要がある。その役割は主に養成大学に求められるものであり、今後、公認心理師養成大学教員連絡協議会(公大協)でもこれらについての検討や提言が行われることが望まれる。

 一方、実習指導者は養成大学から目的と評価基準やその方法を確認した上で、大学から提示された教育目標をどのようにして実現するかを実際の活動と照らし合わせて検討し、評価基準に基づいてどのように学生を評価するかについて具体的に立案していかなければならない。これは、普段から教育活動に取り組む状況に身を置いていない実習指導者にとって、簡単な課題とはいえないだろう。

 実習におけるこのような課題に実習指導者が実践的に取り組み、不安や混乱なく実習指導を進めることができるよう、実習指導者に求められる知識と技能を整理し、研修を展開していきたい。

 以上のように、公認心理師の会の設立記念講演会は大盛況のうちに終わりました。

 公認心理師の会は、国民のメンタルヘルス向上と公認心理師制度の発展に向けて全力で取り組んでいく覚悟です。新しい公認心理師の時代がやってきました。ぜひ一層のご支援をいただけますようにお願い申し上げます。