公認心理師の会

倫理委員会の課題・活動方針

公認心理師の倫理的課題と当会の活動方針

a.国民の心の健康において、今、どんなことが問題になっているか

公認心理師法第一条には「この法律は、公認心理師の資格を定めて、その業務の適正を図り、もって国民の心の健康の保持増進に寄与することを目的とする。」とある。能登半島地震等、自然災害の脅威は常に我々のそばにある。またダイバーシティ&インクルージョン、また社会のIT化も急速に進行する中で、社会で共有される価値観や生活様式の多様化を極める中、国民の心は複雑な適応を迫られているといえる。

b.これらの問題に対して、国家資格である公認心理師はどのように貢献できるか

公認心理師はこのような中で社会から求められる役割を自覚し、地域社会と連携しつつ、支援対象者およびその関係者を支援してゆく。さらに多職種連携による支援の意義と支援チームにおける公認心理師の役割について理解し、積極的に活動を行う。心理学と心理的支援について豊かな知識や技能を修得している専門職が公認心理師である。保健医療、福祉、教育、司法・犯罪、産業・労働等の活動分野において、支援対象者の安全を大前提としながら、支援対象者中心の意思決定を援助し、主体性を奪うことなく援助を提供してゆく。

また、自己研鑽とそれを続ける意欲及び態度を持つことも公認心理師に求められている責務であり、生涯教育であるという認識を持つのも公認心理師としてあるべき姿である。さらに自分自身だけでなく、支援対象者やその関係者への心の健康教育をおこない、次世代を担う人材の教育、スーパービジョンなど、教育を実施する意欲と技能をもつ継続性や波及性も重視している。

c.公認心理師の会として、どのように国民に貢献したいか

こうした公認心理師に寄せられている強い期待と責務を果たすために、公認心理師の会はいくつかの重要な事業を推進している。

まず、公認心理師資格が誕生して間もないこの時期には、公認心理師とはどうあるべきかを唱え、議論する必要があるだろう。そこで、公認心理師資格をもつ者すべてのあるべき姿として,公認心理師の会の倫理綱領を作成している。当会は倫理綱領を広く公認心理師だけでなく国民に周知し、公認心理師にはそれを徹底させてゆく。公認心理師は、国民から信頼されなければその目的を達成することは出来ない。その自覚を、会員一人一人に促せるよう取り組んでいく。

また、公認心理師としてはどのような資質や技能が求められるのかについて、保健医療、福祉、教育、司法・犯罪、産業・労働のすべての活動領域において共通するコア・コンピテンシーを条文化した。心理学教育を受けてきた公認心理師はもとより、別の対人援助領域で活動してきた公認心理師に対しても、公認心理師としてのコア・コンピテンシーを定期的に学べるよう、研修制度を充実させてゆく。公認心理師は資格更新がないため、このコア・コンピテンシー研修を充実させることは意義深い。

最後は科学を重視する当会の態度を反映している。多くの有益な心理学的知見が産出されている中、心の健康と援助に関するエビデンスから支援対象者に最適な提供する技能を促進する。そればかりでなく、支援の発展や開発、実践における課題発見・解決能力の向上、心理学としての学術的知見やエビデンスの産出といった、科学者-実践家としての公認心理師の専門性をさらに高めるための研修を充実させる。ただし、支援対象者の個別性や多様性を尊重してこそ良好なコミュニケーションをとることができるため、科学性を重視しつつ、人間に対する豊かな理解と人間性をはぐくむ方向づけを行う点も公認心理師の会の特色と言えるだろう。

d.問題の解決に向けて、政治や行政にお願いしたいこと

公認心理師の会は国民の心の健康の保持増進に貢献するために、公認心理師を対象とした上記の各種事業および国民に対する啓発活動等を継続しておこなってゆく。しかし、公認心理師法やコアカリキュラムは公認心理師の教育や活動の質に直接連動する大きな要因であるといえる。改正する必要があると判断されるならば、議員連盟の先生方の助力をいただきたい。