[ こころの健康のために]公認心理師とは

公認心理師とは何かについて、Q&A形式でまとめてみました。

Q 公認心理師とはどのような資格ですか?          

A 公認心理師とは、「医師」「教師」「弁護士」「公認会計士」などと並ぶ本格的な国家資格です。国家資格とは、国の法律にもとづいて、特定の職業につく能力が証明される資格です。公認心理師は、2015年に制定された「公認心理師法」にもとづいてできました。心理系では初めての国家資格で、日本の心理学の歴史で画期的なことであり、国民にとっても大きな意義があります。2018年に初めての国家試験がおこなわれ、2019年に公認心理師が誕生しました。まだ新しい国家資格です。2024年12月現在、7万人以上の公認心理師が登録されています。

Q これまでの心理系の資格とはどう違いますか?        

A これまでも臨床心理士や産業カウンセラーなど、心理系の資格はたくさんあり、長い歴史を持つ資格もありました。しかし、これらは民間団体や学術団体などが認定する「民間資格」であり、法律にもとづいた資格ではありませんでした。このため現場において心理職は不利な扱いを受け、その実力を発揮できず、社会へ貢献も思うようにできませんでした。そこで、心理系の国家資格を作ることは心理学関係者の長年の悲願であり、関係者が総力をあげて取り組んだ結果、ようやく2015年に実現しました。

Q 公認心理師はなぜ国家資格となったのですか?       

A 国家資格である公認心理師ができた背景にはいくつかの理由があります。

①心の健康が社会的問題となり、心のケアを望む人が多くなったこと

 最近はいじめ、うつ病や自殺、カルト宗教や犯罪の被害、認知症介護など、さまざまなことで悩んでいる人も多くなっています。これは世界の先進国の趨勢です。例えば、うつ病や不安症に悩む人は人口の2割近くに及んでいます(厚生労働省の資料による)。心のケアは日本社会がとりくむべき優先課題のひとつであり、そのために公認心理師ができたと言えるでしょう。

②心理職の仕事の質を保証するため

 世の中にはいかがわしい民間療法や団体があって、それによって心の傷を負ったり金銭トラブルをおこすようなものもあります。また、「心理」と名のつく資格もたくさんあり、中にはお金を払えば簡単に手に入れられる資格もあり、トラブルをおこして心理職の評判を下げるようなこともあります。そこで、こうしたことから国民を守るために、国が心理職の技能の質を保証する必要が出てきました。医師や弁護士のように、国家資格があると国民は安心して相談できます。先進国では心理職が国家資格であることは当たり前になっています。

③心理職の地位向上のため

 病院の医師・看護師・作業療法士や、学校の教員(都道府県教育委員会が授与する国家資格の教員免許)など、主な専門職は国家資格です。心理職はこれまで国家資格ではありませんでした。そのため、病院などの専門機関での給与水準は、専門職ではなく一般事務職の扱いだったところもあります。国家資格ができて、ようやく他と同等の専門職として認められました。国家資格になると、社会的信用度やステータスを高めます。

Q 公認心理師法とはどのような法律ですか?         

A 公認心理師法は、2015年9月9日に公布され、2017年9月15日に施行された法律です。第1~5章と附則からなります。公認心理師になるためには、この法をよく理解し守ることが大切になります。

 第1章「総則」では、公認心理師の目的や定義などが述べられています。公認心理師の仕事は、①心理アセスメント、②心理的支援、③関係者への心理的支援、④心の健康教育の4つであると定められています。

 第2章「試験」では、公認心理師になるための試験や受験資格などが定められています。

 第3章「登録」は、公認心理師となるための登録制度を定めています。

 第4章「義務等」では、公認心理師が守らなければならない義務などが定められています。

 第5章「罰則」では、第4章などで定められた義務を違反した場合の罰則が決められています。

Q 公認心理師が守るべき法律上の義務はどのようなものですか?   

A 公認心理師法では、公認心理師が守るべき法的義務が定められています。公認心理師がすべきこと、すべきでないことが法律で厳しく定められていることは、国民の信頼を得るために必要なことです。

信用失墜行為の禁止(公認心理師の信用を傷つけるような行為をしてはならない)

秘密保持義務(正当な理由がなくその業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない)

関係者との連携義務(他の関係者等との連携を保たなければならない、また要支援者に主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない)

資質向上の責務(知識及び技能の向上に努めなければならない)

 これらに違反した場合の罰則(資格の登録の取り消しや罰金など)も公認心理師法で定められています。

 また、次に述べる名称の使用制限が定められています。

Q 名称の使用制限(名称独占)とはどういうことですか?    

A 公認心理師法第44条では、「名称の使用制限」が定められています。「公認心理師でない者は、公認心理師という名称を使用してはならない。公認心理師でない者は、その名称中に心理師という文字を用いてはならない」と定められています。これを「名称独占」の資格といいます。これに違反した者は30万円以下の罰金に処せられることがあります(第49条)。

 「名称独占」と対比されるのが「業務独占」の資格であり、医師や看護師のように無資格者にはその仕事が許されないことを示します。公認心理師は業務独占資格ではないので、公認心理師がおこなう仕事は、公認心理師を持たなくても実施できます。名称独占は業務独占よりも緩やかな制限です。ただし、名称独占資格なので、無資格者には心理師という名称を使うことが許されません。

Q 「心理師」と「心理士」はどう違いますか?        

A 心理「師」と心理「士」は、ただ漢字が違うだけで、読み方も同じなので、紛らわしい面があります。しかし、公認心理師法では心理師と心理士には大きな違いがあるのです。公認心理師の資格を持たない者が「心理師」と名乗ると罰せられます。